2015/10/10

唯唯一途に--C6

トーストマスターズ コンピテント コミュニケーション プロジェクト 6 ボーカルバライティ(声の変化)

人生は不思議なものです。日本語にちんぷんかんぷんの私は寄席に行って落語を聞いてきました。百聞は一見にしかず、人から何度も聞くより、一度実際に自分の目で落語の話芸を観るほうが、やる気が湧いてきます。

去年十一月、日本トースターマスターズ秋季大会に参加した時に、日本トースターマスターズの友達に誘われて、お江戸日本橋亭という寄席に行って、笑福亭円笑の落語を聞きました。笑福亭円笑さんはトースターマスターズの友達が落語を習っている先生です。

噺を知らなくても、落語の落ち、つまり、笑い話の結末のことを何となくわかってしまうところはありましたが、そばに座っているおばあさんは始めから終わりまで、ずっと大笑いしていて、私も楽しい雰囲気の中で、落語の面白さを感じていました。

落語会のあと、笑福亭円笑さんが、「唯唯一途に」と美しく書かれた白板を私に下さいました。とても意味深いの言葉です。

本日皆さんの前で、落語の話芸に挑戦してみたいです。では、「まんじゅうこわい」という話しをお聞きください。

ある街に、男が数名集まり、それぞれ嫌いなもの、怖いものを言い合いました。「クモ」「ヘビ」「アリ」などと言い合う中にひとり、「いい若い者がくだらないものを怖がるとは情けない。世の中に怖いものなどあるものか」とうそぶく男がいる。他の男が「本当に怖いものはないのか」と聞くと、うそぶいていた男はしぶしぶ「本当はある」と白状する。「では、何が嫌いなのか」と念を押され、男は小声で「まんじゅう」とつぶやく。男はその後、「まんじゅうの話をしているだけで気分が悪くなった」と言い出し、自分の長屋へ帰って、寝てしまう。

残った男たちは「あいつは気に食わないから、まんじゅう攻めにして脅かしてやろう」と、金を出し合い、まんじゅうをたくさん買いこんで男の寝ている部屋へどんどん投げ込む。目覚めた男は声を上げ、ひどく狼狽してみせながらも、「こんな怖いものは食べてしまって、なくしてしまおう」「うますぎて、怖い」などと言ってまんじゅうを全部食べてしまう。一部始終をのぞいて見ていた男たちは、男にだまされていたことに気付く。怒った男たちが男をなじり、「お前が本当に怖いものは何だ!」と聞くと、「このへんで、濃いお茶が1杯怖い」。

日本語の勉強を始めて、早や十数年が過ぎようとしています。落語の練習によって、日本の風土や人情に、より一層親しめるようになっただけでなく、落語家のように高座にも上がれるようになり、今はとてもうれしいです。人生は不思議なものです。これからも唯唯一途に日本の伝統芸術に触れ合っていきたいです。

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